スイミングマガジン・「2005年06月号」掲載記事
島村俊治の「アスリートのいる風景」
◎ 第1回 「何か出来ることをしよう」

● はじめに・・・
 スポーツアナウンサーの私が始めてスイミングマガジンに書かせて貰ったのが、ソウル五輪のあとだったから、以来17年になろうとしている。東島新次さんと交互に執筆した「スイミングコラム」。かつてのスイマーを訪ねた「会えてよかった」。そして、前回までの「勝負を語る」。いずれも水泳に関することがテーマだった。今回は編集部から、水泳に限らず、スポーツ全般をテーマにして、放送席や取材ノートからのこぼればなしや、私の「今思うこと」を書いて欲しいというありがたい注文を頂いた。スポーツアナウンサーに、たまたまなってしまって40年、いまも現場にこだわって語り、伝えている生き残りアナウンサーの「皆さんへのご協力お願い」から第一回を始めることにしょう。

● 「おおげさに」しないで欲しい・・・
 数年前の全豪オープンテニスの中継でのことだ。当時、世界のトッププレーヤーだった豪のパトリック・ラフターは、試合に勝ったあと、自分の着ていた黄色の汗にまみれたシャツをボールボーイに手渡した。そして、観客席の中段を指さし、そのシャツを観戦してくれた老人に手渡すように指示をした。少年は一目散にスタンドを駆け上がり、ラフターの試合で使った黄色いシャツを届けた。その老人は観客席のハンディキャッパーの席に寝台に横たわりテニスを観戦していたのだった。ラフターのシャツを身体に掛けてもらった老人は感激で目にいっぱい涙を浮かべて喜んでいた。
ラフターは長年に渡り、病院や身体障害者の支援に協力する基金や募金活動を行っていた。記者会見で「身体障害者の老人にシャツを贈ったこと」について問われると、彼はこう応えた。「だいそれたことをしたわけではない。ごく当たり前のことをしただけなんだから、大げさにしないでよ。これっぽっちのことで、幸せを感じてくれたら、僕も嬉しいんだ」グランドスラムの厳しい戦いの最中にも、ハンディキャッパーの存在に気がつくラフターの人となりに私は「真のプロの暖かい心」を感じたものだ。

● 喪章と義捐金・・・
 いま、人気のアイドルテニスプレーヤーマリア・シャラポワはロシアの寒村に生まれ、チェルノブイリの原発を逃れ、才能を見出されてアメリカ・フロリダに渡り、貧しさに耐え、猛練習の末、現代のシンデレラ物語を書き上げた。勿論、まだまだ進化の最中である。美しさと抜群のスタイルに話題が集まりがちだが、彼女も社会に目を向け、悲しみを共有できる暖かい心を持っている。
 昨年のロシアでの学校人質事件の惨事の際、シャラポワは全米オープンテニスを戦っていた。彼女は弔意を表すリボンの喪章を肩につけてプレーに臨んでいた。ロシアの選手がみんなそうしていたわけではない。今年の全豪オープンのときにも、スマトラ沖の地震、津波の被災者のための義捐金をいち早く送っている。このところの災害にスポーツ界の選手や団体がさまざまな形で募金活動を行ったことは素晴らしいことだ。プロのスポーツ選手は成功すれば巨額の富を手に入れることが出来る。欧米のスター選手の多くは社会貢献をすることを、当然のように受け入れ実行している。アメリカのプロゴルフツアーに参加している選手は、必ずといっても過言ではないほど、自分が協力する基金をもっているのだ。

● 心臓移植の募金にご協力を・・・
 プロ野球広島カープのキャンプ地・宮崎県日南市で「静香さんを救う会」が結成され、募金の協力をよびかけていることを知った。私はプロ野球のキャンプ取材で、かれこれ30年近く日南市を訪れている。知り合った仲間も多い。
日南市油津に住む村山静香さんは15歳、一昨年5月に突然倒れ、検査の結果、「拘束型心筋症」という原因不明の難病と診断され治療を続けてきたのだが、「心臓移植」でしか生存の可能性はないと宣告されてしまったのです。日本での臓器提供の可能性は低く、海外での移植・ニューヨーク州のコロンビア大学病院が受け入れてくれることになったのですが、これには莫大な費用がかかります。移植手術費、渡航費、滞在治療費など、個人では到底負担できない8千万円という莫大な額なのです。静香さんのご両親の友人たちは「静香さんを救う会」を結成し募金活動を始めています。「もっと生きたい」海外での移植に望みを託す静香さんのために、皆さん、ラフターやシャラポワの心に近づいてみませんか。メールで励ましてあげても生きる勇気を感じてもらえることでしょう。


「静香さんを救う会」事務所:宮崎県日南市油津4−10−7
電話・0987−31−0326
FX 0987−31−0374
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