Column No.06 (2002/11/29デイリースポーツ掲載分)
◎復帰はマイペース

 スピードスケートの五輪チャンピオン・清水宏保がリンクに帰ってきた。腰を痛めて銀メダルに終わったソルトレイクシティ五輪以来のすべり、札幌・真駒内屋外競技場の復帰戦は貫禄の楽勝だった。
 真駒内は私にとっても思い出深いリンクである。スピードスケートを初めてしゃべったところだ。当時は500メートルも一回だけ、抽選でインを引くかアウトを引くか運・不運があった。屋外のリンクが世界でも多く、記録のいい選手から早いスタートだった。始まって前半で結果がほぼ決まってしまう。従って、生中継は少なく、殆どが録画だった。屋外だから風邪や日差しの影響を受けた。今のような高速の記録は望めなかった。
 今では屋内の高速リンクが世界中で多くなり、500メートルも2本行われ、アウト・インの不公平を無くすようになった。リンクの精度、シューズやスーツの成熟も記録の向上に拍車をかけた。
 清水宏保は高速リンク、スラップスケートへの変化の時代を生き続けていることになる。真駒内の清水のレースをTVで観たが、「得意のロケットスタート」はまだ見られない。それでも「低い安定した姿勢」は変わらなかった。
 清水宏保は目標が決まると、それに向かって時と自分の状態を合わせる事が実にうまい。本当の勝負はまだまだ先、トリノ五輪の前のプレシーズンに向けてレース勘を養い、体を作っていく時期なのだろう。
 真駒内は屋外だから35秒台は難しい。二本目に36秒35のリンク新をマークするあたりは「さすが清水宏保」だ。期待を裏切らないというのがスターの条件だが清水はまさにそうだ。
 それにしても、トリノ五輪まで、清水を脅かす選手はいないのか、ここ数回の五輪ではエース清水の周りにライバル達がいた。「堀井さん、武田さんがいない今、世界では戦えない」と言った意味は深い。一人では厳しいのだ。ライバル堀井の存在を一番あり難く感じていたのは、清水宏保だったことが、改めて真駒内で証明された。



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