Column No.10 (2002/12/27デイリースポーツ掲載分)
◎それぞれの選択

 松井秀喜が「素晴らしい伝統、素晴らしい選手を生んだ」と表現したNYヤンキース入りを決めた。FA宣言から入団まで松井の行動は実にきちんとしたものだった。甲子園で活躍した高校時代から「妙に大人びた」少年だったが、宗教家の父の影響からか、考えや発言は年齢以上のものだった。夢の実現へ向けて終始自分のスタンスをしっかり固めていた。ニューヨークは松井が生活の基盤を置くにはいいところだろう。殊に独身の松井が日本食などを気軽に食べられるマンハッタンに住むなら、それは絶好の生活環境になる。
 私は10数年、長期の滞在をしたが、一人暮らしでお金に不自由しない人ならマンハッタン暮らしをお勧めする。今は、治安も悪くない。10万人の日本人が住むNYはファンの味方も多いし、なんといっても伝統のピンストライプでスタメンに登場となれば日本球界にとっても画期的なことになる。
 「お騒がせノリ」の近鉄残留は、その経緯はともかくとして正解だろう。「夢はメジャー」といいつつも「夢は近鉄を日本一に」とあっさり変えるところが松井と中村では過ごした経験や環境が違うのだ。阪神に行けば、あの阪神ファンの洗礼を受けるし、星野監督は試合だけでなく立ち居振る舞いにも厳しい。近鉄の「いてまえ」の伝統でノビノビやるのと、今の阪神はちよっと違う。
 人気薄のパリーグを盛り上げてくれる方が球界全体から見ればいいのではないだろうか。ただ、スター選手や一流選手は自分の行動が自分だけでなく色々なところに影響を及ぼすことを自覚して欲しい。皆がノリの行動を見てきた39日間だったのだ。少なくとも、アメリカ球界に対していい影響を与えないことは確かなのだ。
 ともあれ、「ノリ騒動」は新聞紙面やTVを賑わせたのだから、マスコミにとってネタのないこの時期、ノリに感謝状を贈ってもいいだろう。ただし、文面はよぉく「ひねる」ことだ。「デイリー」だとどうなるのかな?では皆さん良いお年を!



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