Column No.33 (2003/06/18デイリースポーツ掲載分)
◎変則に徹した勝利

 全米オープンゴルフに変則スイングの代名詞のようなジム・フューリックが優勝した。実力がありながらフィル・ミケルソンとともに「メジャーに勝てない男」といわれ、「地味なタイプの代表」と言われていてだけに心からの拍手と喝采を贈りたいものだ。
 フューリックのスイングはアウトサイドに引き上げ、そこからインサイドに下ろしてくるので、クラブを半回転させるように「くにゃ」っとしたスイングに見える。彼はデビューした頃から一貫してこのスイングを貫き通してきた。パッティングもゴルフを始めた7歳の時に父・マイクが教えたクロスハンドグリップのままだ。父の教えは「これが一番理に叶っている」という。最近はティーチングプロにつく選手がほとんどだが、フューリックの師は今も父親である。
 昔の選手は特徴のあるスイングや動きをする。遠くからショットを見ても、背中からパッティングを映しても誰なのかすぐ判る。ところが、最近の若者は皆きれいで美しいスイングだが、個性に欠ける。遠くから見たのでは誰なのか分からないことがあるのだ。
 全米オープンの週は「父の日」のプレゼントを贈ったことになる。
 もう一つ要因があった。フューリックのキャディーはツアーでは名物キャディーとして知られる白髪のフラウである。タイガーがプロ入りした頃のキャディーだったが、99年の春にコンビを解消され、以来フューリックのクラブを担いできた。そして今回タイガーはチャージがないまま消えた。老キャディー・フラウの心の中を覗いてみたいものだ。
 タイガーが負けるパターンは今回のようにパットが入らない。悪天候の状態。3日目でトップにたてない。この三つの要素に集約される。フューリックの最大の持ち味はクロスハンドグリップを生かしたパットの旨さにある。
 それにしても、中継したTV朝日の3日目までは「タイガーオープンゴルフ」と言いたくなる程タイガーの映像ばかりだった。タイガーを映していれば視聴率がとれるのだろうが、私はますますアンチ・タイガーにになってしまい、フューリックの快挙に大喜びしたものだ。



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