Column No.46 (2003/09/24デイリースポーツ掲載分)
◎勝てば官軍だが・・・

 今夜は甲子園での今季最後の阪神−巨人だ。巨人の原監督はどんな心境で伝統の一戦、思い出の甲子園で采配を振るうのだろうか?
 先週土日の東京ドームの巨人−阪神戦は異様な雰囲気に包まれていた。渡辺オーナーの「10連敗したら問題だった。阪神との3連戦、3連敗したら話は別だ」と言う発言に端を発した原監督の続投か否かの監督問題である。日曜のスポーツ紙の中には、「原、辞任」「原、後任に堀内」という大見出しがセンセーショナルに報じられていた。2日続きで私はドームへ足を運んだ。星野監督に「おめでとう」を言うつもりが思わぬ方向になってしまった。
 台風の影響で激しい雨の降る中、ドームの周りをファンは取り囲んでいた。満員のスタンドの半分は巨人ファンだった。神宮のヤクルトファンの冷たさといおうか、諦めのよさに比べると、巨人ファンは不振の巨人を見捨ててはいなかった。
「監督、久しぶりです」「島村さん、元気でしたかぁ」(私はJSKYで中継しているが、巨人戦の放送だけがないので、原監督とはすれ違いばかりだった)「なんと言葉をかけていいのか困ってるんだ」「僕は何も言っていませんよ」語尾のあと、原監督は口元を引き締めた。「そうなんだ、わかったよ。そうそう、夏は原さんが昔取材したオークランドヒルズCC行ってきたよ改修してきれいになっていた」「懐かしいなあ、あそこは難しいコースで、全米オープンはいい勝負だった」遠い目をして原監督は暫し思い出を辿っていた。「僕は何も言っていません」とキッパリ言うように、原監督は辞めるとは言っていないのだ。それでも、スポーツ紙は独自の取材から見出しをつくる。原監督の進退はいまのところ本人次第だろう。ただ、原辰徳という男はすがすがしい潔い男だということをオーナーも、社長も、代表も忘れていたのではなかろうか。現役を辞めるときの当時の首脳陣の原に対する配慮のなさにも拘らず、彼は毅然として、潔かった。星野監督がよくいう「言葉は大切で難しい」というように、この時期、人事に関しては軽はずみな一言は黙して、漏らさずが鉄則のはずだ。

読売ジャイアンツ


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