Column No.51 (2003/10/28デイリースポーツ掲載分)
◎感動をありがとう(特別掲載文)

 星野監督「勇退」のニュースを私は特別驚きもせず聞いた。その日、私は草津温泉に旅していたのだが、あちこちから携帯が鳴り続いた。ただ、「その日が遠くはない」と予想していたのだが、日本シリーズの直前に漏れるとは思わなかった。阪神の昔からの体質は、やっぱり変えられないのかと唖然とした。これでは選手との「一枚岩」になれるわけがない。
 日本シリーズ初戦の始まる5時間前、そろそろ宿舎を出る頃だと思い星野監督の携帯を鳴らした。嫌なことを聞くより、一声励ましたかっただけだ。
「シリーズらしいいい試合を頼むよ。勝負は時の運だから、熱線を期待しているよ」
「福岡、甲子園に来ないんですか?」
「Jスポーツは中継権ないから行けないんだ」
「そうかぁ。激励、ありがとう。精一杯頑張りますよ」
 静かな雰囲気の中に機密が漏れた寂しさが語感に漂っていた。
 星野監督の体調の悪さは、報道されている以上に悪いことを私は知っていた。時に血圧が200を越えること。胃がむかつき吐き気を催すこと。以前からのむち打ち症、糖尿の気配、酒は飲めないのに肌が妙に赤い日もある。野球だけではなく、社会現象にまでなってしまった阪神フィーバーの中で、家族を持たない一人身の寂しさと厳しさを受け止めて戦い続けた2年間だった。もともと、中日の監督を辞めて評論家の道に入るつもりだったのが、突然の変化、「勝負師の血」が騒ぎ、心が体を抑えきれずに阪神の監督を引き受けたのだ。まだ監督の理想には道半ばかもしれないが、変革者の役割は十二分に果たしたはずだ。星野監督の阪神改革は改めて述べる必要もないだろう。一言で言えば「星野流人心掌握術」がティームを変え、大フィーバーを巻き起こした「カリスマ的行動と言葉」が人々の共感を得たのだろう。
 ところで仙ちゃん、次は何をする?ただの野球解説者ではなく、スポーツ解説委員、広い視野でスポーツを語って欲しい。その先は会長、いやいや、コミッショナーとしてプロ野球を改革して欲しい。 
 それと、安らげる温かい家庭、もう相手にされないだろうが、頑張ってみる気はないのかなぁ・・・・・



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