Column No.54 (2003/11/12デイリースポーツ掲載分)
◎40歳の賞金王誕生

 先週の土曜日、羽田空港でバッタリ、丸山茂樹選手と出くわした。
 「丸ちゃん、久しぶり、どこへ行くの?」ゴルフバッグと大きな荷物をカートに乗せて丸山選手が懐かしそうに笑顔を振りまいた。「いやぁ、島村さんこそどちらへ?」
 私は丸ちゃんに10月のクライスラークラシック優勝のお祝いを述べた。8月の全米プロの時は体調の悪さから精彩がなかったが、すっかり明るく、笑顔が似合う丸ちゃんに戻っていた。沖縄での合宿、日本での治療も行い月曜には米に戻り、ワールドカップに出場するとのことだった。
 そういえば、この週は米ゴルフツアーの最終戦、ツアーチャンピオンシップが行われ、1月から48試合を戦った年間の賞金王が決定する。最終戦は今季ランク上位31人に出場権があり、1勝した丸ちゃんだが、惜しくも出場枠に届かなかったので日本に帰っていたのだ。
 今年のツアーはタイガーの5年連続賞金王なるかが焦点だったが、終盤にきて「フィジーの怪人」ビジェー・シンが最後の5試合で2勝と残り3試合もトップ5という安定した成績でタイガーに逆転、40歳にして初の賞金王に輝いた。
 アジア、アフリカ、欧州を転戦、苦労に苦労を重ね、やっと93年から米ツアーに腰を落ち着かせた。メジャー2勝を含む15勝は「ツアー1の練習男」とキャッチフレーズがつく。なにしろ、1日中コースにいる。「ビジェーに会いたかったらパッティンググリーンかドライビングレンジなどの練習場に行けば必ずいる」というのが取材陣の合い言葉だ。
 ゴルフにいいことはなんでもやる。視力矯正手術を受け眼鏡をはずした。パットに苦しむことが多かったので、大会中はいつも最後までパットの練習を続けている。パターも中尺に変えて成功した。
 今年、女王ソレンスタムが男子ツアーへの参戦を表明した時、彼は批判的な発言をし非難を浴びた。しかし、彼はゴルフエリートではなく、ハングリーに生きてきたから、ぎりぎりで戦っている選手のチャンスが失われることを考えたのだろう。
 「一生懸命、努力し練習した結果だ」と胸をはっていえるビジェー。彼だけは生涯バーンアウトすることはないはずだ。
 「NYの仲間によろしくね」元気な丸ちゃんの今週の活躍を期待してお別れした。



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