Column No.71 (2004/03/24デイリースポーツ掲載分)
◎心ない脅迫


 「選びたかったけど、選べなかった」というのが、日本陸連の本音のようだ。五輪の女子マラソンの代表選考に高橋尚子選手が選ばれなかった。本当は五輪連続金メダルのチャンスを考えれば選びたかったのだ。しかし、選ばれた3人を落とす理由は見当たらなかった。堂々の結果である。それなのに、Qちゃん人気から、代表選手、陸連、マスコミに脅迫が届くとは、なんという心ない人がいるのだろう。こうした現象が起こるのもQちゃんと小出陣営がタレント化したことも遠因となっている。TV、コマーシャルの出演などで、スポーツ選手というよりタレントになり、多くのファンをつかんだのだろう。Qちゃんのマラソンランナーとしてのすごさは誰もが認めるところだ。落選は残念だが、新しい境地を目指して走り続けて欲しいものだ。
 日本陸連は今度の選考方法が招いた混乱を深く反省し次回の教訓にすべきである。元はといえば、4レースを対象にして3人を選ぶことから発している。一番分かりやすいのは一本勝負だ。しかし、現実にはこの案は採用されにくいのだ。マラソンレースはスポンサーもつくし、TVも高い視聴率を稼ぐ。当然、陸連も潤うことになる。何のスポーツでもそうだが、世界で戦うには金がかかる。選手の育成に欠かせないのは環境と金である。マラソンのTV放送は日本が強くなってきた中で、重要な要素になっているのだ。東京・大阪・名古屋と3レースあってもいいから、その一番を選ぶと決めればいいではないか。マラソンの記録はその日の気象やコース条件、参加選手によってガラッと変わってしまうものだ。五輪は記録ではない。勝つことだ。記録を競う五輪のレースでよく言われるのは「世界記録保持者が勝つとは限らないのが五輪」といわれる。五輪の勝者の素晴らしさは決められたその日に勝ったから金メダリストなのだ。勝利はその日だけのものである。一週間後にやれば結果は違うだろう。4年後までずっと一番ではないのだ。私は過去の実績は問わない方がいいと思っている。「その日、その時を生きた者」がチャンピオンだ。
 男女六人の代表は悔いなくその日を迎えて欲しい。結果は「神のみぞ知る」でいいのだ。



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