Column No.76 (2004/04/28デイリースポーツ掲載分)
◎世界で戦えるレベルへ


 アテネ五輪の水泳代表が決まった。今回は少数精鋭といっていいだろう。水泳連盟の方針は「メダル圏内か入賞」を標準記録に設定した。代表は20名、前回のシドニーより一人、アトランタより7人少ない選び抜かれた精鋭である。レベルの高い標準記録設定で新しい顔が少ない反面、ベテランで五輪代表の豊富な山本貴司、稲田法子、田中雅美、大西順子らが選ばれたのは興味深い。大西は29歳になる。山本、稲田、田中は25歳トリオだ。
 水泳アナウンサーとして四回の五輪のマイクを握ってきた私は、日本に欠けている点は、泳ぎ続ける環境がないとということを指摘し続けてきた。若さと勢いのチャンピオンではなく、苦しみ、敗北、挫折、希望、再起を経験して、本当の意味で五輪に挑む選手に出てきて欲しいと願ってきた。五輪への想いが強い選手が戦ってこそ、真の五輪の素晴らしさがあるのだ。即席で集めるプロ集団の野球は、決してふさわしいとは言えまい。
 ベテラン、エース北島、若手と、今回はバランスがとれたティームといえよう。水泳は個人レースが主だが、実は五輪はティーム力を問われるのだ。ベテラン達のリードと後輩への心づかいは必ず良い結果ににつながるだろう。
 今回の日本選手権選考は分かりやすくてよかった。前回の千葉すず選手の行動は利己主義の面もあったが、結果として水連が反省し、すっきりした選考になった。五輪に挑み落選した選手も納得するだろう。マラソンで醜態をみせた日本陸上競技連盟も参考にすべきだ。
 注目の北島康介の世界記録は出なかったが、私はそれでよかったと思っている。冬の短水路で勝ったデービスを追うかたちの方がいいのだ。しかも、平泳ぎのような特殊種目は五輪の年になると、必ず欧州勢が出てくるものだ。世界記録保持者が勝つとは限らないのが五輪だ。奢らず、焦らず、自分のやり方に拘って五輪のその時に生きて欲しい。結果は神のみぞ知る。生涯一のレースをすることで、結果ではないのだ。
 水連は「世界と戦うには、まだレベルに達していない」と見ている。正しい評価だろう。それだけに、望みが高いということでもあるのがから・・・・・



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