Column No.99 (2004/10/27デイリースポーツ掲載分)
◎講演会から

 先週、ある講演会に招かれ、「人の心をつかむ話し方」というテーマで話をさせてもらった。全国議事記録、議事運営事務研修会に参加した方々がお相手である。分かりやすくいえば、全国の市議会などで速記を行っている方の勉強会が国会議事堂近くの憲政会館で開かれお話をさせてもらったのだ。
 この速記の世界もテープやビデオの発達で最近は育成や存続も厳しい時代になっている。
 講演の中で「星野SDの人心掌握術は会話の面白さ、凄さにある」とエピソードを紹介させてもらったのだが、ここでは「人の話をよく聞く川上哲治さん」の例をお話してみたい。
 以前、NHK時代に川上さんに監督とコーチのコミュニケーションについて伺ったことがある。「自分が監督の時のやり方は、各専門のコーチから全部意見を吸い上げる。そして、きちんと自分の結論をもってこないコーチはダメなんだ」「例えば、今日の試合のリリーフ投手が三人いるとする。Aはボールがよくきています。Bは気持ちがのっています。Cは制球がいいです。とコーチが報告したとする。お前、今日誰を使ったらいいんだと聞く。その時、Bがいいと思いますと答えられるのが本当のコーチだ。その時、誰だといえない者は俺は信用できないのだ」「でも、決めるのは監督ではないのですか」と私が聞くと、「そこなんだ。それぞれのコーチには分担がある。打撃、守備、投手など、それぞれのコーチの意見を聞いて、総合した中から監督の私が判断する。コーチのいうとおりにしないこともある。だが、情報だけ伝えても、答えを持ってこないコーチはダメなんだ。」
 川上さんはX9の頃、こうして組織を作り上げたのだと理解した。そこには、コーチとの綿密なコミュニケーションがあったということだ。
 今季で阪神の佐藤義則投手コーチが退任した。シーズン中、もう一つ言いにくそうに苦悩していた彼の胸中が、決別の時にわかった。「岡田監督は自分が年上なので気を使ったんじゃないですか。ほとんど話もせず、人ずてだった。俺は教えるだけ。何もしてない」
 どうやら、指揮官とコーチの意思の疎通があったようだ。これではX逸は止むおえないだろう、「人の心をつかむ会話」は仕事の中では特に大事だと、わが身に言い聞かせた次第である。



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