Column No.126 (2005/05/18デイリースポーツ掲載分)
◎ スペインの新星に期待

 子供のころ、田園コロシアムという当時の日本のテニスのメッカがあり、私が通っていた小学校は、その隣にあった。レンガを砕いた赤土のコートで全日本やデビスカップなどの国際試合が行われており、教室に聞こえてくる場内アナウンスに心がときめいたのを覚えている。ハードコートが普及したテニス界たが、クレーコートの粘り強いラリーの応酬こそがテニスの原点といえるだろう。
 「赤土の中に魔物が住む」といわれるテニスの全仏オープン・ローランギャロスが来週始まる。WOWOWの完全中継で、明日、私はパリに向かうのだが、今週は男子の見所をとりあげてみたい。
 男子の場合は女子以上にクレーコートのスペシャリストが活躍する歴史がある。近年のテニス界はオールラウンダーといわれるどのコートの種類にでも対応するプレーヤーが活躍するようになってきた。現在の世界ナンバーワンプレーヤー、スイスのロジャーフェデラーはその代表的な選手である。今シーズンは全豪オープンこそベスト4で敗れたが、世界ツアーで5勝、この人の勝負強さはこのところの決勝戦に進んだ試合で18連勝という信じられない成績に象徴されている。だだ、全仏に関して言えば、クレーコートのスペシャリストたちがめじろおしの、スペイン、フランス、アルゼンチン勢が強い。昨年はアルゼンチン勢の悲劇的な死闘が繰り広げられた。今年の私の一押しはスペインの18歳の若者・ラファエル・ナダルだ。一昨年16歳でデビューした左利き、ファッション感覚もユニークで膝下までの「サブリナパンツ」でプレーする。このパンツはゴルフの宮里藍ちゃんら若い女性がよくはいているもので、あのオードリーヘップバーンが「麗しのサブリナ」という映画で人気をよんだオールドファッションでもある。バンダナ、ノースリーブ、サブリナパンツとナダルはなにしろカッコいいのだ。勿論、プレーも魅力的だ。面白いのだ。すばやい動き、どんな体勢らでも攻めてくる野性味、フットワークの変幻自在と読みの素晴らしさ、今年は成績でも急成長を続け、フェデラーとも互角の戦いをしている。5月1週のローマの大会ではクレーコートのスペシャリスト・アルゼンチンのギジェルモ・コリアを5時間の熱戦の末破り今季5勝をマーク、そのうちの3勝はマスターズシリーズというビッグトーナメントだった。すばやいフットワークと強打、ローランギャロスの女神は18歳の若者に微笑むのだろうか。来週から始まるパリからの放送、ご期待ください。



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