Column No.131 (2005/06/22デイリースポーツ掲載分)
◎ 忍耐力の戦い

 ホールアウトした丸山茂樹が顔をゆがめて「全米オープンというタイトルは変えて欲しい。辛抱、忍耐の大会というように」答えていた。パインハーストで行われた全米オープンゴルフ選手権、世界のトッププレーヤーが至難のコースのいじめにあっているような惨憺たるスコアーのホールアウトになった。アマチュアのようなスコアー、誰もが打ちのめされていた。でも、これが全米オープンなのだ。
 最終日、リードして連覇を狙うレティーフ・グーセンが出だしからボギーの連続、81という信じられない大たたき、最終日の3打差はリードとはいえないと思っていたが、案の定そうなった。マスコミは「タイガー6打差で大逆転か」とあおり、放送もタイガーにご贔屓のようなはしゃぎぶりだったが、これも私には疑問符だった。何故なら、タイガーのメジャーでの勝パターンに逆転は似合わないのだ。タイガーチャージといわれるが、タイガーの勝ち方はリードして最終日を迎え、チャージして差を広げて勝つパターンがほとんどなのだ。
 ニュージーランドのマイケル・キャンベルが首位にたち、タイガーに2打から3打の差を付けた時、「タイガーが競り合って勝つところを見たいが、どうかな、同じ組でプレーしていれば、プレッシャーをかけられるが、相手が後の組だとタイガーの凄さが伝わらない。だから、追い上げ、逆転のケースは少ないのだ」キャンベルはタイガーの恐ろしさ、勢いを自分の目で見ることなく、コースに耐えることに専念して逃げ切った。
 NZ勢の全米オープンの勝利は始めてになる。彼は米のツアーであまり活躍していないから、日本のファンにはあまり知られていないが、欧州ツアーでは6勝している実力者だ。全英オープンでは優勝争いをしたこともある。ただ、米が主戦場ではないので、この全米オープンに関していえば、欧州の予選会を通過して出場権をえた。健闘した深堀圭一郎が日本の予選会から挑戦したのと同じケースになる。優勝を決めたキャンベルが両手で頭を押さえ、涙したシーンに夢を追い続けた「渡り鳥」の忍耐が偲ばれた。南半球の豪州勢は「渡り鳥」と呼ばれ、世界のツアーを転戦しているのだ。NZの女性首相・ヘレン・クラークさんは「わが国の最高のスポーツの成果、全ての国民が祝福を贈る」とキャンベルの優勝を見届けてから、政務についたという。キャンベルが少年時代から練習したチタヒベイGCには朝からメンバーが集まり、「ヒーローになってゆく我らがマイケルに」テレビで声援を贈ったという。日本は何れの日に快挙の日が訪れるのだろう。



--- copyright 2001-2005 New Voice Shimamura Pro ---
info@shimamura.ne.jp