Column No.144 (2005/09/21デイリースポーツ掲載分)
◎ プロ野球、世界へ

 日本のプロ野球は日本プロフェッショナル野球協約の下で行われている。1951年6月21日に発効、その後2回改正され今日に至っている。その第1章・総則の、協約の目的第3条第2項に「わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う」と明記れている。しかし、野球界ではアマチュア野球が国際大会に早くから取り組んできた。最近でこそサマランチ前IOC会長の方針で、五輪のプロ化が進められてきたため、プロ野球もこれに便乗したに過ぎないのである。テレビマネーと五輪の肥大化・スター主義に片棒を担いだとってもいいだろう。そこには、野球界の主体性を見出すことは出来なかった。逆にアマチュアの夢と希望を刈り取ってしまっていたのである。
 そんな中、米大リーグと大リーグ選手会が主催するWBC・ワールドベースボールクラシックが提唱され、日本にも参加への打診があった。しかし、開催が3月であること、MLBの運営方法が独善的であることなどを理由に日本プロ野球選手会は即答を避け、検討を重ねた結果、大会参加の意向を日本プロ野球組織に伝えたのである。五輪の道が閉ざされたことが逆に野球の国際化を真剣に考え、プロとしての野球を世界的な規模のもとにアピールしようという気運に繋がったといえるのだろう。今年11月には東京で日本、韓国、チャイニーズ台北、中国の4ヶ国によるアジアシリーズも行われる。日本からはシリーズの優勝ティームが出場する。
 WBCへの期待は非常に大きい。今アメリカ大リーグは中南米・日本などからの外国人選手の活躍が大きな比重を占めている。その選手たちがメキシコ、ドミニカ、プエルトリコ、パナマ、ベネズエラ、日本、韓国などの母国ティームに戻ってティーム編成の中に加わればその国の真のオールスターティームが出来上がることになる。勿論、アメリカもMLBのスター選手で編成しなければなるまい。これでこそ、五輪などとは比較にならない豪華で夢のプロ野球の試合になるのだ。アテネ五輪の少ない観衆の中で戦った寂しい「世界最高の試合」は間違えだったことに気づかされるはずだ。
 WBCの案では米、東京、プエルトリコで一次リーグを行い、決勝リーグはアメリカとなる。キューバの参加は未定とはいいながら、16の国が参加する。監督の要請を受けた王監督は前向きに考えたいとしなからも「日の丸を背負う最強ティーム」を強調している。時期的な問題など、クリアーすべきハードルは高いが、野球協約が出来て、半世紀以上たち、やっとそのスタートラインに立てたことは、意義深い決定といえるわけだ。



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