Column No.160 (2006/01/25デイリースポーツ掲載分)
◎ あっちっち

解説の遠藤愛さんと・・・


 この暑さは一体何なのだろう。全豪オープンテニスの行われているメルボルン、日曜日の22日、最高気温は42度4分まで上がった。どんな暑さかというと、顔も腕も熱くて痛い。そのままでいると、やけどをしてしまいそう。金本選手の火焔の荒行はこんなものなのか、と想像する。頭も熱い。髪が薄くなっているので地肌も日焼けしてしまう。40年以上もスポーツ中継をやっている私にとっても初めての経験だった。
 全豪オープンでは暑さが限界を超えた場合、ヒートポリシーといってレフリーの権限で休憩時間を設けたり、試合を遅らせたり、2つの屋根付アリーナの屋根を閉じたり、選手の健康管理を考えた措置がとられる。このヒートポリシーは金土日と3日間適用された。日曜日などは屋外の全コートで昼間の試合は行われなかった。大会が行われているのにしーんと静まり返っている会場は、初めて見る異様な雰囲気だった。ダブルス登場の浅越しのぶ選手は朝の試合が夜に変更「ホテルに帰って寝てました」というほど選手はコンディションの調整に苦労する。オランダの若手クライチェクは試合中に気分が悪くなり、お腹の痛みと吐き気で目がくらんでボールが見えなくなってしまった。トレーナーの薦めもあり涙を流しながら棄権せざるを得なかった。普段暑さの中で厳しいトレーニングをしているトップ選手でも猛暑には勝てない。
 さて、ヒートアップといえば、第2シードのロディックが伏兵・キプロスのバグダティスに足元を救われ完敗、ベスト8に進めずコートを去った。
 バグダティスはこの勝利で地中海に浮かぶ小国キプロスのヒーローになったのである。移民の国オーストラリアはギリシャの出身者が多い。ギリシャとキプロスは同じ民族なので、スタンドはギリシャとキプロスの国旗を振って応援の歌を歌っての大賑わい、故郷キプロスでもテレビ中継で結果を知った人々が噴水のあるロータリーに集まり祝杯をあげて大騒ぎをしているそうだ。アメリカからの放送関係者や記者はすっかり落ち込んでしまっている。「強いアメリカ」を誇示している彼らの頼みはダベンポートただ一人になってしまった。ホスト国オーストラリアもストーサーだけ、両国とも「あっちっち」とやけどをしてしまった今大会、もっとも日本も同じこと、始まったジュニアたちの健闘を祈ることにしよう。


ベスト8入りしたダベンポート選手


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