Column No.184 (2006/07/26デイリースポーツ掲載分)
◎ 永遠の課題

 夏の甲子園を目指す都道府県大会が全国各地で繰り広げられている。既に甲子園への代表が決まったところもあれば、梅雨の長雨の影響でスケジュールが狂い、まだ大会の前半戦のところもある。この季節は朝刊を開くとまず母校の結果を確認する方が多いはずだ。一喜一憂したあと、各都道府県に目を移す。甲子園を20年ほど喋ってきた私は「ああ、今年も残っているな。相変わらず強いな。あと一歩だったのに残念、監督さんはまだ元気に指揮をしているのかな。この学校は知らないな」などと呟きながら読むのが楽しみでもある。
 甲子園を目指す高校野球は素晴らしいものなのだが、今年も嫌な記事を目にするとやりきれない想いにかられる。秋田県の代表に決まった学校が準決勝で故意に三振をしたり、ランナーがわざとアウトになるような行為をしたというニュースを読んだ。大量点のリードを奪っていたら、雨が激しくなりコールド勝より、ノーゲームになりそうだったので試合展開を故意に早めようとしたのだった。勿論、監督からの指示が出ていたという。高校野球の悪しき弊害と言える「勝利至上主義」は相変わらずなくならない。かって、甲子園で星稜の松井秀喜選手に対する五つの敬遠が話題になった。真剣勝負をすべきという意見と作戦だから許されるという考えが対立した。敬遠は卑怯と片付けてしまえばそれまでだが、敬遠は野球の作戦の中に現実には行われている。この時も「勝利至上主義」が話題になったのだが、今回のケースとは違う。恐らく、今回の選手たちには「罪悪感」「後味の悪さ」がずっとついてまわるのではあるまいか。改めて、指導者のあり方が問われることになるだろう。この学校は東北で指折りの左腕投手をもっており、しかも18年ぶりということで、地元の期待も大きかったのだろう。勝つことは一番の目的ではあるが、それが全てではない。悔いを残すとは負けゲームにだけ存在するわけではないのだ。
 今月18日、高野連会長を21年務められた牧野直隆さんが亡くなられた。牧野さんは選手の障害防止、不祥事による処分基準の緩和などに取り組み高校野球の発展に尽くされた。それでも、不祥事はあとを絶たない。いじめ、暴力、万引き、セクハラ、喫煙、飲酒、窃盗、無免許運転などで謹慎、除名、対外試合禁止、警告などの処分は日本学生野球協会の発表では40件を超えている。「勝利至上主義」と「不祥事」は永遠に無くならないのだろうか。



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