Column No.186 (2006/08/09デイリースポーツ掲載分)
◎ スポーツを文化に

 千葉ロッテのホームグランド・マリーンスタジアムにミュージアムが開館した。球場内に併設したのではなく、正面玄関の右手に独立の会館として建設された建物である。ミュージアムはアメリカのカフェのようなシンプルな感じの2階建て、今月(8月)1日にオープンした。日本の球場には球団の歴史や活躍した選手の思い出の品を展示してあるところは意外なことにあまりない。松山の坊ちゃんスタジアムなど地方球場の方が郷土の歴史として大切にメモリーしている。甲子園にも阪神歴史資料館があるが、ロッテのミュージアムは一球団のものとしては、「日本一」といってもいいだろう。
 ロッテは昨年アジア、日本などプロ野球のタイトルを総なめにしたのだが、ミュージアムに入ると、そのレプリカトロフィーや劇的なシーンの写真が入場者を迎えてくれる。次に進むとユニークなスタジアムゾーンが待っている。ここはマリーンスタジアムを擬似体験できるコーナーだ。バッターボックス、ブルペン、ライトフェンス下の芝生と本物をそのまま再現してある。ダッグアウトもある。ロッテはアメリカンスタイルなので、ベンチは後ろ、選手は立って試合を見ている。選手しか入れないロッカールーム、ここで選手は着替えをする。選手や監督、コーチと同じ気分になって体感できるのだから、子供たちは大喜び、野球ファンの大人でさえ嬉しそうにダッグアウトに入ってバレンタイン監督のガム風船をふくらますまねをしている。
 2階に上がると、ロッテ球団の歴史、活躍した懐かしのヒーローたちの写真、ユニフォームの変遷、東京、川崎球場のミニチュアなどが陳列されている。当時の漫画や雑誌なども懐かしい。ロッテは毎日オリオンズとしてスタートした。私も憧れた「火の玉投手」荒巻、華麗なホームラン王・別当、シュート打ちの名人山内、「ミサイル打線の面々」400勝投手金田、ミスターロッテ有藤、三冠王・落合、マサカリ兆治・村田、安打製造機・張本等々日本のプロ野球の歴史を築いた名選手の姿に出会えるのだ。「いゃあ、勉強になりました。放送の役にたちます」と一緒に仕事をしている加藤暁アナウンサーが呟いた。もう一つ素晴らしいのは、レクチャールームという談話室があることだ。球団の先輩たちが訪ねてきたら寛いでもらうとともに、そこで来館者に野球の話やミニレッスンをしてもらうのだそうだ。日本のスポーツ界は歴史や先輩を大切にしないところがある。語り継ぐところから、スポーツは文化になる。写真と資料の前で父が息子に語る光景に出会えた。
 僅か、2ヶ月余りで完成させた関係者の熱意、「スポーツ文化を育てたいのです」と語ってくれた言葉が心地よく残っています。



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