Column No.191 (2006/09/13デイリースポーツ掲載分)
◎ スポーツビジネスの勝利

  全米オープンテニスの男子決勝でスイスのロジャー・フェデラーは余裕をもって大会の3連覇を飾った。今年は全豪優勝、ウィンブルドン4連覇、まさに現代のスーパースターである。決勝戦のフェデラー側の応援席の最前列にゴルフの王者のタイガーウッズが座り、終始リラックスして拍手を送っていた。以前から2人のスーパースターは懇意だったのだろうか。決勝戦の相手がアンディーロディック、アガシ去りしあとのアメリカの将来を託す柱だっただけに、不思議な気がしながら私はテレビ画面に映るタイガーを伝えていた。
 「テニスとゴルフ、競技は違っても相通じる勝負心はあるのでしょう」と・・・・
 タイガーがアメリカのロディック陣営にいないで、フェデラーの側にいたのはこういうことだった。2人はメインスポーツの契約スター、2人が会ったのはこの決勝戦が初めてのことだった。翌日のニューヨークタイムスの見出しは「挑戦者のいない(ロディック)2人のチャンピオン」だった。どうやら、テレビを活かして「してやったり」とほくそ笑んだのはナイキスポーツということか。
 女子のチャンピオンもシンデレラストーリーをもつ、世界一稼げるマリア・シャラポワだった。今大会のシャラポワは圧倒的に強かったし、テニスの内容も非常にレベルの高い「真のチャンピオン」に相応しい戦いだった。
 表彰式でのスピーチも今大会から会場名がビリー・ジーン・キングさんの名前になったことに感謝し、「史上の名選手を讃えた見事なもの、19才の女性に成熟した大人を感じさせるスピーチだった。
 シャラポワはテニスも素晴らしいが商魂も逞しい。ニューヨークでは毎日あの「ウエストサイド物語」の「アイ・フィール・プリティ」の曲にのってシャラポワが脚光を浴びるコマーシャルが流れ続けた。エナン・アルデンヌを決勝で破り、優勝が決まった直後、コートに膝まづき祈った。バッグから腕時計を取り出すと腕にはめた。慌てていたのかなかなかうまくかからなかった。携帯を取り出すとナンバーをプッシュした。スタンドの父であり、コーチでもあるユーリーも携帯でずっと話していた。家族と喜びを分かち合っているやに見えた。
 この様子をテレビカメラはあますことなくアップで伝えている。そして、ここにもビジネスが働いていた。時計も携帯電話も彼女のスポンサーなのだ。
 勝利者は優勝のフェデラー、シャラポワだけでなく、スポーツビジネスも加えなければならないのだろう。



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