Column No.202 (2006/11/29デイリースポーツ掲載分)
● 悪いシステム

 先週の大学・社会人ドラフトでの結果について、また言わせてもらわねばならない。同じことを何度も言うようだが、アマチュアの監督は「プロ野球とは何か」「仕事に就くということはどういうことなのか」を認識し、プロになろうとする学生にきちんとした就職指導をすべきである。プロ野球という産業で働くのに、球団という企業への希望はあっても、「希望にそえないなら、社会人に行く」などと、とても職業意識があるとは思えない発言に愕然とした。就職の選択権は、基本的には企業の側にある。打った、投げたの野球の指導しかできないような監督は高校、大学の指導者としては、敢て不適格と言わざるを得ない。
 もっとも、日本のドラフト制度そのものにも、一貫性がないから、選手や監督も選ぶ権利があると思ってしまうのだ。希望枠、高校と大学・社会人の分離はシステムとして決して平等とは言えないのだ。ロッテのバレンタイン監督が「悪いシステム」というように、ドラフトは球団が選手を選ぶシステムである。ロッテ入りを熱望していた木村雄太投手が横浜に指名されたことに関して、バレンタイン監督は横浜行きを進めた。人と人の縁は何が幸いするかはわからない。縁を大切にすることが大事だろう。就職試験は企業が学生を選ぶためのものだ。学生が企業に試験をやるのではない。プロ野球は産業、ティームは企業という意識を野球界もアマの指導者も選手も、再確認して欲しい。
 日本ハムの指名に対して日大の長野久義選手が驚きもあったのだろうが、拒絶反応を示した。監督が怒った。指導者は「何が起こるかわからない」位、何で予測ができないのだ。その後、当初の態度から軟化したように報道されているが、プロでのプレーを望むなら喜んでアジア一・日本一の日本ハムに行くことだ。「社会人に行く」などとは、口が裂けても言って欲しくなかった。
 今度のドラフトで嬉しかったのは四国アイランドリーグから二人の選手が指名されたことである。石毛代表の切り開いた独立リーグから、初のドラフト選手、指名した巨人とロッテのフロントに敬意を表したい。アルバイトをしながらプレーをしてきたハングリー精神で、開拓者になって欲しいものだ。翌日の報道で巨人に指名された深沢和帆選手の爽やかな笑顔が印象に残る。
 ドラフトはいつの時代でも悲喜こもごもだが、分かりやすい平等の制度にするべきではないだろうか。



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