■ Column No.211 (2007/02/07デイリースポーツ掲載分)
● 出会い旅

選手と一緒にグランド整備をするヒルマン監督

 プロ野球のキャンプが始まった。30数年にわたりキャンプ取材を続けているが、旅から旅へ各球団をまわっていると思いがけない出会いが嬉しいものだ。殊に、裏方さんと称する球団スタッフの方とはこの時期でないと会えないこともある。
 宮古島のオリックスを訪ねたら、堀井さんにばったり「いゃあ、久しぶり、どうしているんですかぁ」「いま、スカウト部長をしてるんですよ、島村さんも長いですねぇ。放送の声聞いて応援していますよ」堀井さんは南海ホークス時代、俊足を生かし代走や守りで貴重なバイプレーヤーだった。去年亡くなられた父は南海の黄金時代の主力選手だった。
去年までロッテにいた宮田さんが「ようこそいらっしゃいました。来てくれるだけで嬉しいですよ」「あれっ、オリックスにきたんですかぁ」「そうなんですよ、不思議に外国人監督のもとが続くんです」宮田さんはベースボールマガジン社にいた方でロッテからオリックスに変わっても編成部長の要職を務める。
 用具係の松本さんも元気に活躍しているのが堪らなく嬉しい。「かなり、白髪が増えたじゃない。でも、元気そうだねぇ」
「島村さんに実況してもらってから30年以上になりますねえ」キャンプをスムーズに進めるには用具係の手腕にかかっている。かって、東洋大姫路で甲子園の優勝投手になった松本さん、その瞬間を私は実況したのだが、その歳月の流れと、長い間、縁の下の力に徹する彼の野球人生をも見守っていきたいと思う。
 旅の出会いは球場の外にもある。沖縄に来ると必ず寄る店がある。郷土料理の「花ずみ」にここでは珍しい味に出会える。おおたにわたりの酢味噌和え、あだんの芯のいためもの等などだ。店の雰囲気がよく、カウンターで毎年、お客同士で話が弾む。店の女将も魅力的である。今年は大阪の調理・製菓専門学校の部長・松本さんと仲良くなる。毎月生徒の勧誘のためのオリエンテーションに何十年もきているので、沖縄は詳しい。何よりも今の若者の心を掴む術を熟知されているようだ。
 必ず待っていてくれる店「夢風亭」のオヤジ・稲守さん。脱サラで始めた沖縄料理の店は繁盛している。去年は奥さんの大病で苦労したが、二人で乗り切った様子を感慨深げに語ってくれた。どこかに、サラリーマン時代の面影が残っていて、会話もスマート、でも沖縄の暖かい心で満ち溢れている。店に飾られた彼の骨太の筆「古酒を飲む、肝内(こころ)に燭を燈す、ゆっくりしようよ」夢風。
 キャンプの出会い旅、来週は宮崎に行く。 


「夢風亭」のオヤジ・稲守さん


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