■ Column No.215 (2007/03/06デイリースポーツ掲載分)
● メジャーを伝えよう

 松坂の投じた初球を、アメリカの大学生は見事にレフト線に2塁打を放った。テレビの実況中継を見ていた誰もが、松坂の初球は「ストライク」のコールを期待していたはずだ。
 日本では不思議に思えるが、アメリカのプレシーズンマッチでは大リーグと学生が対戦することはよくあることだ。この日、ボストンはデーゲームでブルージェイズと戦い岡島は打者3人を抑え、松坂はナイトゲームでボストンカレッジと対戦していた。因みにオープン戦という言い方はしない。オープンという意味はプロとアマが一緒にプレーするという言葉だから、高いステータスのある大会を意味する。オープン戦という言葉はない。でも、ボストンカレッジとの対戦はまさに「オープン戦」といえるだろう。NHKはそのオープン戦を放送した。今年はイチロー、松井秀喜、松坂、井川、岡島、岩村、井口、城島、大家、大塚、田口、斉藤、松井稼、そして上がるであろう桑田と日本のトップレベルの選手たちがずらっと並んでいる。日本のマスコミの関心とファンの期待はプロ野球より大リーグに集中する1年になるだろう。何しろ、大学生相手の「オープン戦」が日本にナマ中継されるのだから。
 松坂は打たれた直後も表情を変えず、その後はピシャッと六人を抑えた。審判のストライクゾーンの確認、マウンドの傾斜、捕手・バリテックとのコンビネーション、そして自分の今の状態、それらをチェックしながら初登板を終えている。抑えた、打たれたは、さして問題ではないのだ。イチローがインタビューの答えでよくいう「一つ一つ、小さなことを積み重ねていくしかないんです」ということを松坂もやっていくことだろう。
 ところで、これだけ数多くの日本人選手が大リーガーとして注目を集める時代なのだから、マスコミも「大リーグの真の姿」を伝えて欲しいのです。日本人選手の活躍に焦点があるのは当然だろう。しかし、野球はティームゲームだ。日本人選手が属するティームを応援する放送の時代は終わりにして欲しいのだ。何故なら、日本人選手が所属するティーム同士の対戦は数多くある。ならば、きんと試合の勝ち負け、ペナントレースを伝えるべきだろう。イチローがどんなに頑張っても、シアトルは優勝争いをしていないことを知らない人が多いのだ。まして、今季は偶然とはいいながら、アメリカンリーグに日本人選手が集まっている。日本人選手がなぜ大リーグを目指すのか、そこにある大リーグの本当の素晴らしさを伝えて欲しい。NHKはもっと、質の高い大リーグ中継に挑戦することだ。少なくとも、大リーグのドキュメントは見ごたえのある番組になっているのだから。



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