■ Column No.218 (2007/03/27デイリースポーツ掲載分)
● 王道をゆく

 パリーグ開幕の2日目、ソフトバンクの王監督は昨年7月2日以来、公式戦で白星を飾った。7月17日に胃の全摘出手術を行い、厳しい闘病生活、リハビリを経て辿り着いた勝利の笑顔、誰もが待っていた王さんの「監督復帰の指揮」である。
 選手、監督、NHKの特別解説者時代から長いお付き合いをさせていただいた私も「元気になっての勝利」は格別な思いで拍手を贈った。
 開幕前日の金曜日、東京三越で開かれていた王さんの記念品の展示会に出かけてみた。昨年のWBCの優勝の瞬間の巨大なパネルの笑顔に始まって、選抜高校野球優勝投手としての若い王少年、巨人入団時の契約書。これは12ヶ月に分割して報酬を支払うようになっていたが、金額のところは隠されていた。荒川師匠と稽古した居あい抜きに使われた日本刀、868号のホームランの記念リング等々興味ある記念品、王貞治という野球人の歴史がそこに散りばめられ、王さんの努力とその成果を垣間見ることが出来たのだ。「大好きな野球」と王さんの自筆によるキャッチフレーズのこの展示会、出口のところに「ファンの皆さんから王さんへのメッセージ」というコーナーがあった。お年寄りから若者まであらゆる世代の野球ファンがメッセージを書き綴っている。一つだけ目に留まった可愛いメッセージを紹介しておこう。「わたしとけっこんしてください」6さい・女
 「王さんの監督像とは?」と問われると以前はホームラン王のイメージが強すぎて「監督・王」として語るのは難しかった。たが、昨年のWBCでの世界一の監督以来、私はこのように王監督を語っている。まず、正攻法をとる監督である。いつも正しいことを主張する王さんは組織論、采配も正攻法をとる。基本的にはオーダーは固定、長打力のクリーンナップと機動力のバラエティ、奇策や奇襲はまずない。ローテーションを確立、中継ぎの厚みと絶対のストッパー、要するに投打のバランスを重要視した野球なのだ。昨年の「スモールベースボール」は決して王さんの望むところではなかったはずだ。今年は追うさんの理想にそったティームといえるだろう。
 王さんの素晴らしさは、誰にも平等に接してくれるということだ。試合前の報道陣との談笑は、必ず王さんが報道陣に近寄り、王さんの方から話しかける。若かろうとベテランだろうと態度は変わらない。試合前、必ずグランドでミーティングをする。コーチ選手だけではない。打撃投手やサポートスッフを含めて全員で意思確認を行うのだ。
 「大好きな野球」で王道をゆく王監督、一つ年下の私もマイクとともについて行くつもりだ。



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