■ Column No.221 (2007/04/17デイリースポーツ掲載分)
● 対決の名勝負を期待

 松坂とイチローの対決は全国民が何らかの映像を見たはずだ。驚いたのは、その日の夕方以降のニュース番組では、松坂がイチローを抑えたことに終始し、打たれて負けたこと、マリナーズが勝ったことは添え物のように報じられていたことだ。確かに、「歴史的対決」というキャッチフレーズは相応しいとは思うが、野球はティームゲームである。これが、相撲やテニスのような一対一の対面競技ならわかるのだが、野球はティームとティームが対戦する競技である。二人とも意識は強かったはずだが、ティームの勝利を目指す中のひとコマとしての対決であることを知っているのだ。マスコミがやたらに対決ムードを盛り上げる異常な報道の仕方に私はいささかうんざりしていた。実際に対決も「やや平凡なもの」だったのではなかろうか。
 それが証拠に松坂は「カーブ」から入った。誰もが奇妙に感じたはずだ。余りにも状況がセッティングされていたからか、ティームの勝ちにこだわったのか、いずれにしても捕手のサインと松坂の決断は間違ったものではなかった。イチローの状態の悪さから「名勝負」にはならなかったのだが、「名勝負」とは試合の展開の中で、自然にそうゆう状態が出来上がり、そこに役者が登場する。そして技術と力の限りを尽くして「対決する」から、名勝負が生まれるのだろう。
 いずれ、2人の対決で、そうゆう場面が来るだろう。勝負の極意、秘術を尽くしての戦いは、まだ先でいいのだ。むしろ、私にはフェルナンデスの力投の方が遥かに感銘を受けた。若い速球派のフェルナンデスが「日本からきた怪物」にどんな思いで対戦しようとしたのか、松坂に投げ勝ってどう思ったのかを知りたいほどだった。そして、報道はティームの勝ち負けを優先して欲しい。イチローも松坂もティームとして勝利に貢献することを優先して戦っているのだから。
「対決」でいうなら、日曜日のロッテ・西武戦の延長12回、小林雅とカブレラの勝負は圧巻だった。前日、ストッパーを失敗し、大逆転を喫した小林雅はバレンタイン監督の「信頼」のもと、嫌な負けの翌日マウンドに上がった。リードする里崎は1球ごとにミットで手招きし小林にカブレラに逃げずに向かってくるように指示をだした。かって小林は何度かカブレラに逆転やサヨナラのホームランを喫している。
 8球の勝負は「全てストレート」で押した。得意の落ちるシュートは封印した。「力と力」の見事な戦い。カブレラも思いっきりよくバットを振り回した。最後は空振りの「サンシーン」状況はまったく違うとはいえ、松坂イチロー対決を遥かに上回る「勝負」だった。
 こんな勝負を、いずれアメリカ人に見せてあげて欲しいものだ。



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