Column (2003/06/02号・週刊ベースボール掲載分)
◎ファンサービスと応援の心

 千葉・幕張のマリーンスタジアム、ロッテの地元開幕日の3月31日とこどもの日の5月5日、ライトの応援席全面は巨大な白い横断幕が広げられた。まるでスキー場のゲレンデのような白い布に、黒い文字が記されていた。
 「マリーンズ26」、迂闊なことに実況していた私は『26』の意味が分からなかったのだが、26の数字はベンチ入りの25人、そして26番目のスタンドのロッテファンもベンチ入りの選手と同じ心で戦っているという証の数字だったのだ。
 「ロッテファンの応援とマナーは日本一」と言われている。どんなに負けても、メチャクチャにやられても、ライトスタンドを埋め尽くしたロッテ応援団は選手に罵声を浴びせたり、応援用具や物をグランドに投げ込むようなことはしない。

 選手と同じ白に黒の縦縞のユニフォームに身を包み、体全身を使って応援を表現する。声の強弱、その場での軽いジャンプ、彼らも選手との一体感で演技し、戦っている。
 昨シーズンの終盤、西武優勝の時は、ロッテ応援団は盛大なエールを送って西武の優勝を讃えた。井原監督以下西武ナインは胸に熱いものを感じつつ、ライトスタンドまで歩を進め、お礼の挨拶をしたものだ。ティームはずっとBクラスが続いているが、「応援は日本一」と私は実況中よく言っているのだ。
 冒頭に紹介した巨大な白い横断幕は、実は、表彰された賞金を使って製作したのだそうだ。毎日新聞が主催する「優れたスポーツ選手や団体に贈る毎日スポーツ文化賞」にロッテ応援団は選ばれていたのだった。
 応援団だけではない。ロッテ球団の営業活動には地域との結びつき、スポーツを文化の域に近づけたいという意思が感じられるのだ。営業企画を担当する社員は丸山一仁、横山健一、高瀬智宏さんたちである。丸山さんはかつての二塁手、実働は6年だったが、確か二割七分は打ったシュアーな選手だったと思う。
 ファンサービスにはこんなものがある。ロッテのキャラクター人形が千葉市内の幼稚園を回り、一緒に遊びながら興味を持ってもらう催し。マリーンスタジアムの正面玄関で、試合前に選手のサイン会、撮影会を行う。練習見学会や球場見学会もある。ナイター前の午後二時頃に集合してもらいトレーニングルーム、記者席、ベンチ、グランド、室内ブルペン、電光掲示のコントロール室などを案内する。普段行けないところを案内するわけだから参加者は興味深々だという。身障者のシートも中央の1階、見やすい特等席を「スマイルシート」として電話予約を受け付けている。
 素晴らしいのは「ラッキーマンデー」と称し5回のイニングの合間に子供たちを右中間のグランドに招くことだ。子供たちが選手のプレーをしている芝生の中を飛び跳ねる楽しくほほえましいイベントなのだ。
 丸山さんたちのテーマはお客とフロントと選手がファミリーであり、手作りの応援イベントにしたいのだそうだ。
 地域への貢献、良識ある行動を行い、子供の夢を育てたい。選手で果たせなかった夢の続きを追っている人がここにもいた。一度、マリンスタジアムに来てごらんなさい。きっと感じるものがあるはずです。あとは、ロッテがいい野球で勝つことだろう。

千葉ロッテ・マリーンズ
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