Column (2003/06/30号・週刊ベースボール掲載分)
◎オールスター投票のあり方を問う

 私はアメリカのプロスポーツのオールスターが大好きだ。大リーグしかり、NBA(バスケット)しかり。ファンの夢を叶えようという目的の中に、試合だけでなく、そのスポーツの歴史、文化、伝統を受け継ぎ、次の世代の子供たちを大切にしようという思いにあふれているからだ。試合は一試合だが、その週はオールスターウイークと称し色々な催しがある。ホームラン競争、オールドスターの試合、NBAならダンクコンテスト、新人と二年目の選手による試合など、毎日趣向を凝らした催しを行い、最後にたった一試合のオールスターを迎えるのだ。プロスポーツを興行の面からみても、はるかにアメリカの方が夢を与えてくれるのである。

 言いたくはないが、日本のオールスターは、始まる前のファン投票の途中経過を見ただけで私はしらけてしまう。ファンは野球ファンとは限らない。ティームファンが大勢(たいせい)を占めると思っていいのだろう。そこには、ベースボールを愛することではなく、ご贔屓ティームへの盲目的な愛が優先してしまうのだ。勿論、フランチャイズの確立されているアメリカでも同じことなのだが、アメリカは主要都市に人気チームが散らばっているために、日本のような片寄った現象にはならないのだ。
 中日に移籍後一度も登板のない川崎投手に多くの票が集まっている。再起を願うファンの気持ちは理解できるが、川崎ほどの投手ならマウンドで結果を出し、堂々と選ばれたいのではないだろうか。同情をするより、暖かく再起を待つのが思いやりというものだろう。
 バッティングも話題のムーアが一塁手で高い得票を得ているのはなんだかわかる気もする。私も放送していて、ムーアのバッティングを「見たい、期待したい」と何度もアナウンスした。しかし、一塁をやっていない投手を選ぶのは、他の一塁手に失礼だろう。おそらく、ムーアは監督推薦で選ばれると思うから、オールスターのゲームの時には、きっと原監督は打席に送り出すはずだ。監督の演出を期待して待っていればいいではないか。
 ロッテのリック・ショートのショートでの投票が5万を越すというのは、これはジョークなのだろうか。ロッテのショートは名手小坂がいる。ショートとは名ばかりで、本職はサード、しかしフェルナンデスがいるので、リック・ショートは慣れないレフトで、転げ回って大健闘を見せている。ぜひ、レフトのショートを認めてあげて欲しいのだ。
 セ・リーグは全ポジションを阪神が独占している。大差で首位を独走していることは、全員がよくやっているから「あいつは相応しくない」とは言わない。しかし、阪神ファンは阪神対パリーグのオールスターが見たいのだろうか。星野監督に聞いてごらんなさい。私の想像では「アホなことを」というはずだ。個人的には、ラミレス、鈴木健、宮本の票が伸びて欲しい。ヤクルトファンは、ちょっとおとなしすぎるのではないかなぁ。
 まあ、ファン投票に目くじらを立てるほどのことはないのだが、不正な投票だけは今年をもって最後にして欲しい。インターネットと携帯では一人一日5票までとなっているが、一人一日5千票と思われるものもあるのだ。せっかく運営委員会が大リーグに近づけようと、90年からマークシート方式を採用したり、インターネットの利用も取り入れたのだ。悪用しては意味がない。
 ファン投票の最終締め切りは6月22日、プロ野球ファンの誰が見ても「納得する」結果になってほしい。一番それを望んでいるのは、選手なのだから。

2003サンヨーオールスターゲーム

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