Column (2003/07/28号・週刊ベースボール掲載分)
◎助っ人になれる投手は多くはない

  7月6日のナゴヤドームでオリックスは日曜日の23連敗にようやく終止符をうち、ブラックサンデーに別れを告げた。 
 二日続きの打線の爆発もあったが、殊勲功は4日前に来日、即登板して7回を3失点に抑えたジェイソン・フィリップス投手の粘りの投球だった。
 決してボールが速いわけではない。142〜3キロの直球だがコントロールがいい。大きなカーブとスライダー、フォークは纏まっているがおとなしい。彼の経歴が物語るように、12年間でメジャーは2年だけの1勝3敗、A〜3Aまでのマイナーでも59勝66敗の成績だった。

 ただ、今年はインディアンス傘下の3Aバッファローで6月末まで10勝1敗、当然メジャー昇格の道もあったのだが、29歳の年齢から、ティーム方針としての「若手起用」があり、彼は夢を変えて日本でのプレイを選択したのだそうだ。
 7月2日来日、日米のボールの大きさの違い、ストライクゾーン、連携プレーなど未成熟のままのマウンドだった。しかも、日曜日の23連敗中という珍記録の中、レオン監督はなりふり構わず、フィリップスにストッパー役を託したのだった。当日実況アナだった私はレオン監督に「実践を見たことなくてどうですか?」と聞くと、「コントロールがいいのが安心だが、ストライクゾーンは自分で覚えていくしかない。かなり神経質になってるみたい。リラックスさせてやりたい」
 案の定、2回の投球に入る前に審判から使っているグラブを注意された。ひもの色が違っていたのだ。日米の違いである。彼は自分の練習用のグラブを持っていたので事なきをえ、落ち着いて対処したのだ。
 同じ野球でも日米では若干の違いがある。今年、アメリカから来た投手のボークが多い。広島のブロック投手はすでに8つのボークをとられている。セットポジションの静止について解釈に差があるのだ。いうまでもなく、野球環境、文化、生活、言葉と彼らにとって異国である。レオン監督と思い出話をしていたら、ヤクルト時代、同僚のホームランバッターだったホーナーは、マンションに帰ると淋しさのあまり10分おきに電話をかけてきたと、当時を振り返って今では笑い話として語ってくれた。
 最近のプロ野球ではアメリカを始めとする外国人投手がやけに多くなってきた。横文字の投手が登板しない日はないのだ。フィリップス投手の初登板、初勝利でふと調べてみたくなり私の放送台帳をめくってみた。7月6日現在の日本球界で登板した投手はセ21人、パ14人の35人にも上る。成績はのべにするとセ193試合の登板で38勝50敗37S、パは168試合で44勝48敗11S、合計361試合の登板で82勝98敗48Sとなる。つまり外国人投手はトータルで負け越しているのである。好成績を残しているのは、ムーア、ウイリアムス、ベバリン、ミラバル、ミンチーと数えるほどしかいない。
 彼らはほとんど大リーガーとして実績を残して日本に来たわけではない。3Aでは活躍するが大リーグに常時在籍する力はないのだ。つまり大リーガーとして何かが不足しているから活躍の場を求めて日本にやってくるのだ。そして成功するのはコントロールがいい、日本に馴染み、日本の野球にフィットする投手ということになる。
 ちょっとでも油断しあまくみると今年のホッジス、バルデス、ペドラザのようになってしまうのだ。
 外国人投手はますます増え続ける傾向にある。因に、98年は24人、10年前の93年は郭泰源とタネルの2人だけだったのに、いまや35人。本当に「助っ人」として働いているのは数人に過ぎない。「補強と育成」のバランスを各球団はどう考えているのだろう。



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