Column (2004/01/17号・週刊ベースボール掲載分)
◎パ・リーグの年になって欲しい

 今年はパ・リーグに肩入れしたいと思っている。その理由は五つある。
 その1 「王ダイエーの連覇なるか」だ。日本シリーズの連覇は90〜92までの森監督時代の西部以来0年間途絶えている。ある会で挨拶にたったV9監督の川上哲治さんはこう言った。「一つ勝つことは出来るんですよ。大事なのは続けて勝つことです。」川上さんにこう言われると、誰も反論できない。「すごい選手ばかりだったんだから当然でしょう」と、負け惜しみがせいぜい。選手が揃っていたって連覇すら出来ないのが昨今である。

 王監督は、昨シーズン中に来年も指揮をとると表明したのは並々ならぬ決意の現れと、私は見ていた。勝手な判断だが、王さんは「今年が最後」と私は予想している。小久保の移籍にからむごたごたや本社の業績の悪化など、決して追い風とはいえない中で、王さんの不退転の決意に同世代としては声援を送りたくなるのだ。

 その2 日本ハムの札幌移転に伴う球団のあり方に拍手を送りたい。プロ野球の発展は都市対抗の姿が理想的だ。ヒルマン監督の地域密着の姿勢が好ましいし、そこへ新庄の加入は追い風となってファンの心を捕らえられるのだろう。新庄の持つスター性、入団の時の「これからは大リーグではなく、セ・リーグでもなくパ・リーグの時代」といったところがなんとも言えずいい。プロ選手なのだからこのぐらいファンにアピールする発言が必要だ。もう一つ良かったのは、ヒルマン監督の説得で浦和学院の須永英輝投手が「巨人以外だったら社会人に行く」と言っていたのを撤回し、入団の決意をしたことだ。「好きな球団、あこがれのティーム」に行けるとは限らないのがドラフトだ。プロの仕事を選ぶなら球団よりプロ野球を選ぶことだ。好き嫌いのためにタイミングを逃し一生を棒にふった選手は沢山いる。強いティームより弱いティームの方が出られるチャンスは多いのだ。「弱いティームを俺の力で強くする」くらいの心意気がなくては、どこへ行っても駄目になる。新しい土地でスタートする日本ハムを選んだ須永君に拍手を送りたい。そして、ぜひ成功して欲しい。

 その3 千葉ロッテのバレンタイン復帰とティーム強化である。かつて、志半ばまで日本を去ったバレンタインにとって、やり残したことを取り返しに帰ってきたことだ。前回の指揮ぶり、メッツでの成功と手腕は確かだ。しかも、強打アグバヤ二、アジアのホームラン王、イ・ジョンヨプの加入、小宮山投手の復帰、さらに、大リーガー左腕ラッシュ投手の獲得も話が進んでいると聞く。もちろん、イが日本で変化球攻めを克服出来るのか、小宮山に多くを望めるのかなど、手放しで喜ぶわけには行かないかもしれない。しかし、ロッテに足りなかったホームランとクレバーな投球術は、夢につながるのだ。バレンタインのアメリカでの人脈も役に立つだろう。

 その4 オリックスに誕生した中村勝広GMの手腕に期待したい。日本でのGM制は95年から2年間、広岡達朗さんが努めたが、完結しないままで終わってしまった。星野前阪神監督もGM的役割を果たしていたが、辞任後、GMに就任したわけではない。野球ビジネスの確立のためにも、中村さんには成功してもらいたい。アメリカのGMの多くは、野球と経営を勉強してきた企業からスタートした人が多い。オリックスは短期間で石毛監督を解任した前例があるだけに、今度は時間を与えて、経営者自身も我慢する姿勢が必要だろう。

 最後の、その5は、今年から始まるプレイオフ制度。こんなおかしなプレイオフを私は認めがたいのだが、「参りました。面白いです」と言わせるようなことを「意地でも」やってみて欲しい。決めたことだ、一年でやめるようなことがあれば、関係者は辞任するくらいの覚悟でやって欲しい。
 そんなわけで、去年の阪神フィーバーから、今年はパ・リーグに注目しようぜ!



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